合同会社を社員2人で設立する場合の定款記載例(ひな形)
以下に社員2人で設立する合同会社の定款の記載例を示します。
- 社員(出資者):2名
- 業務執行社員:2名
- 代表社員:1名
- 現物出資:なし
定款記載例
神奈川商事合同会社 定款
第1章 総 則
(商 号)
第1条 当会社は、神奈川商事合同会社と称する。
(目 的)
第2条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
- ○○の製造
- ○○の販売
- 前各号に附帯又は関連する一切の業務
(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を神奈川県川崎市に置く。
(公告の方法)
第4条 当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。
第2章 社員及び出資
(社員の氏名、住所、出資及び責任)
第5条 社員の氏名及び住所、出資の価額並びに責任は次のとおりである。
1.金50万円 神奈川県川崎市〇〇区〇〇町〇丁目〇番地
有限責任社員 神奈川 太郎
2.金50万円 神奈川県川崎市〇〇区〇〇町〇丁目〇番地
有限責任社員 神奈川 次郎
(持分の譲渡)
第6条 社員は、他の社員全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。
(競業の禁止)
第7条 業務を執行する社員は、当該社員以外の社員の全員の承諾を受けなければ、次に掲げる競業行為をしてはならない。
一 自己又は第三者のために当会社の事業の部類に属する取引をすること。
二 当会社の事業と同種類の事業を目的とする会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
(利益相反取引の制限)
第8条 業務を執行する社員は、次に掲げる場合には、当該取引について、当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければならない。
一 業務を執行する社員 が自己又は第三者のために当会社と取引をしようとするとき。
二 当会社が業務を執行する社員の債務を保証することその他社員でない者との間にお
いて当会社と当該社員との利益が相反する取引をしようとするとき。
第3章 業務の執行及び会社の代表
(業務執行社員)
第9条 社員 神奈川太郎及び神奈川次郎を業務執行社員とし、当会社の業務を執行するものとする。
(代表社員)
第10条 当会社の代表社員は業務執行社員の互選によって定めるものとする。
2 代表社員は社長とし、当会社を代表する。
(報酬)
第11条 業務執行社員の報酬については、当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければならない。
第4章 社員の加入及び退社
(社員の加入)
第12条 新たな社員を加入させるには、総社員の同意を得なければならない。。
(社員の任意退社)
第13条 各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができる。この場合においては、各社員は、3カ月前までに会社に退社の予告をしなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる。
(社員の相続及び合併)
第14条 社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合には、当該社員の相続人その他の一般承継人は、当該社員の持分を承継して社員となることができる。
第5章 計 算
(事業年度)
第15条 当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までの年1期とする。
(計算書類の承認)
第16条 業務執行社員は、各事業年度終了日から3カ月以内に計算書類(貸借対照表、損益計算書、社員資本等変動計算書及び個別注記表をいう。)を作成し、社員の過半数の承認を求めなければならない。
2 前項の計算書類は、作成した時から10年間、これを会社に保存しなければならない。
(損益分配の割合)
第17条 各社員の損益分配の割合は、各社員の出資の価額による。
(利益の配当)
第18条 利益の配当をしようとするときは、毎事業年度末日現在の社員に配当するものとし、業務執行社員は、次の事項について決定しなければならない。
一 配当財産の種類及び帳簿価額の総額
二 社員に対する配当財産の割当てに関する事項
三 利益配当が効力を生じる日
2 社員は、前項の決定後でなければ当会社に対して利益配当の請求をすることができない。
第6章 附則
(最初の事業年度)
第19条 当会社の最初の事業年度は、会社成立の日から令和〇年3月31日までとする。
(定款に定めのない事項)
第20条 この定款に定めのない事項については、会社法その他の法令の定めるところによる。
以上、神奈川商事合同会社を設立するため、この定款を作成し、社員が次に記名押印する。
令和○○年○○月○○日
有限責任社員 神奈川太郎 (実印)
有限責任社員 神奈川次郎 (実印)
記載例の説明
上記記載例の各条文の説明です。
商号
商号とは会社の名前のことです。
合同会社の商号には、「合同会社」という文字を必ず使用しなければなりません。
合同会社の商号については、こちらで詳しく説明しています。
> 『合同会社(LLC)の商号(会社名)について』
目的
会社が行なう事業を記載します。
会社は定款に書いている事業以外を行なうことはできません。今すぐ行なわなくても、将来行なう予定の事業は記載しておきましょう。
合同会社の目的については、こちらで詳しく説明しています。
> 『合同会社(LLC)の事業目的について』
本店の所在地
合同会社の本店の所在地と会社の住所のことです。
本店の所在地は定款に必ず記載しなければなりません。
合同会社の本店所在地については、こちらで詳しく説明しています。
> 『合同会社の定款の本店の所在地の書き方について』
公告の方法
公告とは各種の情報を広く一般に知らせることをいい、公告方法とは会社が公告をする方法をいいます。
公告方法として、次に掲げる方法のいずれかを定款で定めることができます。
- 官報に掲載する方法
- 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
- 電子公告
社員の氏名、住所、出資及び責任
合同会社の定款の絶対的記載事項とされています。
ここでいう「社員」は出資者のことです。
一般的に使われる「従業員」としての「社員」ではありません。
持分の譲渡
合同会社の社員は、原則として、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができません。
競業の禁止
競業行為の禁止については、会社法の規定どおりにする場合であっても、社員に会社法の競業禁止についての規定を理解してもらうために、任意的記載事項として定款に定めておくことをお勧めします。
競業行為の禁止についての規定を強化・緩和することもできます。
規定を強化する場合は、以下のような定め方が考えられます。
社員は、当該社員以外の社員の全員の承認を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。
緩和する場合は、以下のような定め方が考えられます。
業務を執行する社員は、当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。
利益相反取引の制限
利益相反取引の制限については、会社法の規定どおりにする場合であっても、社員に会社法の利益相反取引の制限についての規定を理解してもらうために、任意的記載事項として定款に定めておくことをお勧めします。
利益相反取引の制限についての規定を強化・緩和することもできます。
規定を強化する場合は、以下のような定め方が考えられます。
業務を執行する社員は、次に掲げる場合には、当該取引について、当該社員以外の社員全員の承認を受けなければならない。
緩和する場合は、以下のような定め方が考えられます。
業務を執行する社員は、次に掲げる場合には、当該取引について、当該社員以外の社員の承認を受けることを要しない。
業務執行社員
業務執行社員とは、合同会社の業務を執行する社員のことです。
代表社員
業務執行社員が1名である合同会社では、その業務執行社員が代表社員となります
業務執行社員の報酬
業務執行社員の報酬についての定めを入れることが多いです。
社員の加入
ここでいう社員は、従業員のことではありません。出資者のことです。
社員の任意退社
退社事由は、社員にとって影響の大きな事項です。会社法の規定を理解してもらうために、任意的記載事項として定款に定めています。
社員の相続及び合併
合同会社の社員が死亡又は合併により消滅したときは、原則としてその社員は合同会社から退社することになります。
定款に定めることにより社員が死亡又は合併した場合でも、相続人又は承継会社が持分を承継することができます。
事業年度
合同会社は事業年度を定めなければなりません。
事業年度は定款に記載することが一般的です。
計算書類の承認
合同会社には、株式会社と異なり、計算書類の承認義務はありません。
株式会社と同様に、計算書類につき出資者の同意を得るという仕組みにしておいた方が良いでしょう。
損益分配の割合
合同会社が各社員に損益を分配する割合は、原則として各社員の出資の価額に応じて定まります。
損益分配の割合は、定款で自由に定めることができます。
以下は、その一例です。
(損益分配の割合)
第○条 利益の分配は、社員神奈川太郎が5割、社員神奈川次郎が5割とする。
2 損失の負担は、社員神奈川太郎が4割、社員神奈川次郎が6割とする。
損益の分配の割合が出資の比率に対応していない場合に合理的な理由がないときは、税務上の問題が発生する可能性が考えられます。
利益の配当
合同会社の社員は、原則としていつでも会社に対し、利益の配当を請求することができます。
合同会社は、利益の配当に関する事項(利益の配当を請求する方法、時期、回数、当期に配当する利益額の決定方法等)を定款で定めることができます。
最初の事業年度
事業年度と同じように、最初の事業年度を定款に記載することが一般的です。