合同会社の社員には、持分というものがあります。
合同会社の持分とは、合同会社の社員としての地位とでもいえるものです。株式会社の株式のようなものです。
合同会社の持分を譲渡するには他の社員の承諾が必要
株式会社の株式は自由に譲渡できるのが原則です。株式の譲渡には制限を付けることができ、そういう株式を譲渡制限株式と言います。
合同会社の持分は自由に譲渡できないのが原則です。合同会社は社員同士のつながりがあることが前提になっていて、見知らぬ人が会社に勝手に入ってこないようにするためです。
法律上の原則は、以下のようになっています。
①業務を執行する社員がその持分を譲渡するには他の社員の全員の承諾が必要
②業務を執行しない社員がその持分を譲渡するには業務を執行する社員の全員の承諾が必要
(持分の譲渡)
社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。
2 前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。(会社法第585条第1項、第2項)
ただし、定款で別段の定めをすることができます(会社法第585条第4項)。
合同会社の持分の譲渡の方法に関する定款の別段の定め
合同会社は、定款に持分の譲渡の方法に関する別段の定めを置くことができます。別段の定めでは持分の譲渡を完全に自由にすることもできます。
別段の定めの例としては、以下のようなものが考えられます。
- 持分の譲渡について他の社員の承諾を不要とする
- 非業務執行社員が持分を譲渡する場合には、他の社員の承諾を不要とする
- 非業務執行社員が他の社員に持分を譲渡する場合には、他の社員の承諾を不要とする
- すべての社員の持分の譲渡について他の社員全員の承諾が必要とする
- 社員以外の者に譲渡する場合には他の社員全員の承諾が必要とする
- 持分の譲渡について代表社員の承諾を必要とする
合同会社の持分の譲渡に伴う定款の変更
合同会社の社員が持分を譲渡すると、定款の変更が必要です。
「社員の氏名又は名称及び住所」、「社員の出資の目的及びその価額又は評価の標準」は、定款の絶対的記載事項とされているからです。
持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
(中略)
四 社員の氏名又は名称及び住所
(中略)
六 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準(会社法第576条)
持分の全部又は一部を社員以外の者に譲渡すると社員が加入し、定款の変更が必要になります。
持分の全部又は一部を社員に譲渡した場合、譲渡した社員の持分が減少、譲渡された社員の持分が増加し、定款の変更が必要です。
持分の全部を譲渡した場合は、譲渡した社員の持分はなくなり、その社員は退社することになります。
定款を変更するには、原則として社員全員の同意が必要です。
業務を執行しない社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、その持分の譲渡に伴う定款の変更は、業務を執行する社員の全員の同意によってすることができます。
業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、その持分の譲渡による定款の変更は、業務を執行する社員の全員の同意によってすることができる。
(会社法第585条第3項)
合同会社の持分の譲渡の方法に関する定めと定款変更に関する定め
合同会社の持分の譲渡の方法に関する定款の別段の定めを置く場合は、定款の変更についても考慮する必要があります。