合同会社を社員1人で設立する場合の定款記載例(ひな形)
以下に社員1人で設立する合同会社の定款の記載例を示します。
- 社員(出資者):1名
- 業務執行社員:1名
- 代表社員:1名
- 現物出資:なし
定款記載例
神奈川商事合同会社 定款
第1章 総 則
(商 号)
第1条 当会社は、神奈川商事合同会社と称する。
(目 的)
第2条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
- ○○の製造
- ○○の販売
- 前各号に附帯又は関連する一切の業務
(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を神奈川県川崎市に置く。
(公告の方法)
第4条 当会社の公告は、官報に掲載してする。
第2章 社員及び出資
(社員の氏名、住所、出資及び責任)
第5条 社員の氏名及び住所、出資の価額並びに責任は次のとおりである。
神奈川県川崎市〇〇区〇〇町〇丁目〇番地
有限責任社員 神奈川太郎 金100万円
(相続による持分の承継)
第6条 当会社の社員が死亡した場合には、当該社員の相続人は、持分を承継して社員となることができる。
第3章 業務の執行及び会社の代表
(業務執行社員)
第7条 社員神奈川太郎を業務執行社員とし、当会社の業務を執行するものとする。
(代表社員)
第8条 当会社の代表社員は神奈川太郎とする。
第5章 計 算
(事業年度)
第9条 当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までの年1期とする。
(計算書類の承認)
第10条 業務執行社員は、毎事業年度終了日から3カ月以内に計算書類(貸借対照表、損益計算書、社員資本等変動計算書及び個別注記表をいう。)を作成し、決算を確定する。
2 前項の計算書類は、作成した時から10年間、これを会社に保存しなければならない。
第6章 附則
(最初の事業年度)
第11条 当会社の最初の事業年度は、会社成立の日から令和〇年3月31日までとする。
(定款に定めのない事項)
第12条 この定款に定めのない事項については、会社法その他の法令の定めるところによる。
以上、神奈川商事合同会社を設立するため、この定款を作成し、社員が次に記名押印する。
令和○○年○○月○○日
有限責任社員 神奈川太郎 (実印)
記載例の説明
上記記載例の各条文の説明です。
商号
商号とは会社の名前のことです。
合同会社の商号には、「合同会社」という文字を必ず使用しなければなりません。
合同会社の商号については、こちらで詳しく説明しています。
> 『合同会社(LLC)の商号(会社名)について』
目的
会社が営む事業を記載します。
会社は定款に書いている事業以外を行なうことはできません。今すぐ行なわなくても、将来行なう予定の事業は記載しておきましょう。
合同会社の目的については、こちらで詳しく説明しています。
> 『合同会社(LLC)の事業目的について』
本店の所在地
合同会社の本店の所在地と会社の住所のことです。
本店の所在地は定款に必ず記載しなければなりません。
合同会社の本店所在地については、こちらで詳しく説明しています。
> 『合同会社の定款の本店の所在地の書き方について』
公告の方法
公告とは各種の情報を広く一般に知らせることをいい、公告方法とは会社が公告をする方法をいいます。
公告方法として、次に掲げる方法のいずれかを定款で定めることができます。
- 官報に掲載する方法
- 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
- 電子公告
社員の氏名、住所、出資及び責任
合同会社の定款の絶対的記載事項とされています。
ここでいう「社員」は出資者のことです。
一般的に使われる「従業員」としての「社員」ではありません。
相続による持分の承継
合同会社の社員が死亡したときは、原則としてその社員は合同会社から退社することになります。
定款に定めることにより社員が死亡した場合でも、相続人が持分を承継することができます。
業務執行社員
業務執行社員とは、合同会社の業務を執行する社員のことです。
代表社員
業務執行社員が1名である合同会社では、その業務執行社員が代表社員となります。
事業年度
合同会社は事業年度を定めなければなりません。
事業年度は定款に記載することが一般的です。
計算書類の作成
合同会社にも計算書類の作成義務はあります。
合同会社には、株式会社と異なり、計算書類の承認義務はありません。
最初の事業年度
事業年度と同じように、最初の事業年度を定款に記載することが一般的です。
記載例についての補足
上記の記載例は、社員1人で合同会社を設立し、社員を増やす予定がない場合の定款の記載例です。
将来、社員を増やすことを考えているなら、以下のようなことも定めておく方がいいかもしれません。
- 競業禁止に関する規定
- 利益相反取引に関する規定
- 社員の加入に関する規定
- 利益の配当に関する規定 など
競業禁止に関する規定
競業行為の禁止については、会社法の規定どおりにする場合であっても、社員に会社法の競業禁止についての規定を理解してもらうために、任意的記載事項として定款に定めてもよいかもしれません。
以下は、会社法どおりの規定です。
(競業の禁止)
第○条 業務を執行する社員は、当該社員以外の社員の全員の承認を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。
一 自己又は第三者のために持分会社の事業の部類に属する取引をすること。
二 持分会社の事業と同種の事業を目的とする会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
この他に、競業禁止に関する規定を強化・緩和することもできます。
規定を強化する場合は、以下のような定め方が考えられます。
社員は、当該社員以外の社員の全員の承認を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。
緩和する場合は、以下のような定め方が考えられます。
業務を執行する社員は、当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。
利益相反取引に関する規定
利益相反取引の制限については、会社法の規定どおりにする場合であっても、社員に会社法の利益相反取引の制限についての規定を理解してもらうために、任意的記載事項として定款に定めてもよいかもしれません。
以下は、会社法どおりの規定です。
(利益相反取引の制限)
第○条 業務を執行する社員は、次に掲げる場合には、当該取引について当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければならない。
一 業務を執行する社員が自己又は第三者のために持分会社と取引をしようとするとき。
二 持分会社が業務を執行する社員の債務を保証することその他社員でない者との間において持分会社と当該社員との利益が相反する取引をしようとするとき。
この他に、規制を強化・緩和することもできます。
強化する場合は、以下のような定め方が考えられます。
業務を執行する社員は、次に掲げる場合には、当該取引について当該社員以外の社員の全員の承認を受けなければならない。
社員の加入に関する規定
社員の加入は、定款の変更が効力要件とされています。定款の変更は、原則として総社員の同意が必要なため、社員の加入も総社員の同意が必要です。
(社員の加入)
第○条 新たに社員を加入させるには、総社員の同意を得なければならない。
利益の配当に関する規定
合同会社の社員は、原則としていつでも会社に対し、利益の配当を請求することができます。
合同会社は、利益の配当に関する事項(利益の配当を請求する方法、時期、回数、当期に配当する利益額の決定方法等)を定款で定めることができます。
以下は、その一例です。
(利益の配当)
第○条 利益の配当をしようとするときは、毎事業年度末日現在の社員に配当するものとし、業務執行社員は、次の事項について決定しなければならない。
一 配当財産の種類及び帳簿価額の総額
二 社員に対する配当財産の割当てに関する事項
三 利益配当が効力を生じる日
2 社員は、前項の決定後でなければ当会社に対して利益配当の請求をすることができない。