合同会社の設立手続きは、株式会社に比べて簡単です。
合同会社を設立をするには、大きく分けて以下の2つの方法があります。
- 自分で合同会社の設立を行う
- 専門家に設立を依頼する
専門家に合同会社の設立を依頼するメリットとしては次のようなものがあります。
- 間違いがなく会社を設立できる
- 時間を短縮できる
- 自分の手間を省ける
その反面、専門家に支払う費用がかかります。
お金をかけて時間を節約するか、手間をかけてでもお金を節約するかのどちらかと言えます。
合同会社の設立までの流れ
合同会社の設立手続きは、概ね次のような流れで行ないます。
- Step1基本事項決定
合同会社に関する基本的な事項を決定します。 - Step2定款作成
定款を作成します。
株式会社の場合と異なり、公証人による定款認証は必要ありません。 - Step3会社印作成
商号が決まったら、会社を運営する上で必要な会社印を作成します。
設立登記申請でも必要です。 - Step4出資金払込み
各出資者が各自の出資金を払い込みます。 - Step5設立登記の添付書類作成
設立登記申請の添付書類を作成します。 - Step6設立登記申請
法務局に合同会社の設立登記を申請します。
合同会社は、会社の本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します。
1.合同会社の基本事項を決定する
会社設立に関する基本的な事項を決定します。
合同会社の基本構成
- 社員
合同会社を作るには、最低一人の「社員」が必要です。
ここで言う社員は、一般的に使われる従業員としての「社員」ではありません。
会社に出資をして、経営に参加する人のことを言います。
- 業務執行社員、代表社員
合同会社を複数人で作る場合は、「代表社員」「業務執行社員」を決めます。
業務・経営に携わる役員を業務執行社員と言います。
会社の代表者を代表社員と言います。
合同会社の代表は、代表取締役を名乗れません。
商号
会社の名称のことを商号といいます。商号は基本的には自由に決めることができますが、合同会社の商号には前か後ろに合同会社という文字を入れなければなりません。
例)神奈川商事合同会社、合同会社神奈川商事
商号は自由に決めることができるといっても、言いにくい名前や難しい漢字を使うのは避けるのがいいと思います。
商号に使える文字や符号には制限があります。使える文字・符号は、次のとおりです。
- 漢字
- ひらがな
- カタカナ
- ローマ字(大文字・小文字)
- アラビヤ数字(0,1,2,3,4,5,6,7,8,9)
- 「&」(アンパサンド)
「’」(アポストロフィー)
「,」(コンマ)
「-」(ハイフン)
「.」(ピリオド)
「・」(中点)
※これらの符号を使用できるのは、字句(日本文字を含む)を区切る際の符号として使用する場合に限られます。
商号の調査
商号を実際に使用しても問題がないかどうかを調査します。
二つの観点から調査をします。
- 本店所在地に同じ名前の会社がないことを確認します。法律で同一の所在場所における同一の商号の登記は禁止されているからです。
- 近くに同じような名前の会社がないことを確認します。不正の目的での商号の使用は禁止されています(会社法第8条)し、不正競争防止法に基づく差止請求訴訟や損害賠償請求訴訟を提起されることも考えられるからです。
事業目的
会社が行なう事業の内容のことを事業目的といいます。事業目的は定款の絶対的記載事項とされていて、定款に絶対に記載しなければなりません。
会社は、定款に記載された事業のみを行なうことができます。定款に記載されていない事業を行なうには定款変更が必要ですので、将来行なう予定の事業も記載しておきます。
ただし、あまり関連性のないものを記載しすぎると、会社の信用性に関わることもありますので、むやみやたらと多くしないようにします。また、許認可が必要な場合、不利益を受ける可能性もあります。
事業内容によっては、許認可が必要なものがあります。許認可が必要なものについては、許認可を受けるための要件や申請先などを確認しておきます。
本店所在地
本店所在地とは、会社の住所のことです。定款の絶対的記載事項とされていて、定款には必ず記載しなければなりません。
本店の所在地の定款への記載には、次の2通りの方法があります。
市区町村まで記載する方法と地番まで記載する方法です。通常は市区町村までの記載にします。
定款への記載例)
「当会社は、本店を神奈川県横浜市に置く。」
設立登記を申請する場合には、定款への記載とは異なり、本店の所在地は具体的な所在場所まで記載しなければなりません。
つまり、登記における本店の所在地は、地番まで具体的に記載しなくてはいけません。ビル名、マンション名まで記載するかどうかは自由です。
登記申請書への記載例)
「1.本店 神奈川県横浜市中区○○町1丁目1」
事業年度
会社は決算をしなければなりません。決算は1年以内で区切った期間にしなければなりません。その期間を事業年度といいます。
事業年度は自由に設定することができます。事業年度の区切りとなる期間を決算期といいます。会社の設立後最初の事業年度(初年度)の開始の日は、会社の設立の日とされています。
資本金
合同会社の資本金は法律上は1円からOKです。
しかし、資本金が1円では当面の運転資金にできませんし、会社の信用力にも疑問符がつけられると思います。
2.合同会社の定款を作成する
定款を作成します。株式会社の場合と異なり、公証人による定款認証は必要ありません。
定款には、絶対に記載しなければならない絶対的記載事項、定めるのであれば定款で定めなければならない相対的記載事項と定款で定めなくてもよい任意的記載事項があります。
合同会社の定款の絶対的記載事項の内容
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 社員の氏名または名称及び住所
- 社員全員が有限責任となる旨
- 社員の出資の目的及びその価額
合同会社の定款の相対的記載事項の主な内容
- 会社の存続期間の定め
- 業務執行社員の定め
- 会社を代表する者の定め
- 損益分配の定め
- 社員の退社事由の定め
- 会社の解散事由の定め
- 死亡、合併時の承継人が社員となる定め
- 解散の場合における会社財産の処分方法
3.合同会社の会社印を作成する
合同会社の商号が決まったら、会社を運営する上で必要な会社印を作成します。設立登記申請でも必要です。
会社印3本セットといわれる代表者印(会社実印)、銀行印、角印を作成します。必ずしも3本必要というわけではありませんが、それぞれ用途が違うので、分けておいた方がよいでしょう。
近所のはんこ屋やインターネットネットショップでOKです。
会社の印鑑をインターネットで注文する場合は、注文する前に印影を確認できるとイメージをつかめるので安心できます。
合同会社の会社印については、以下のページをご覧ください。
4.出資金を払い込む
各出資者が各自の出資金を払い込みます。出資金を払い込んだら、払込証明書を作成します。
払込証明書については、以下のページをご覧ください。
5.合同会社の設立登記の添付書類を作成する
設立登記の添付書類を作成します。
添付書類は、設立する会社によって異なります。
自分一人で合同会社を設立する場合
『本店所在地及び資本金決定書』を作成します。
『本店所在地及び資本金決定書』については、以下のページをご覧ください。
社員二人で合同会社を設立する場合
以下の書類を作成します。
- 就任承諾書
- 代表社員、本店所在地及び資本金決定書
『就任承諾書』については、以下のページをご覧ください。
『代表社員、本店所在地及び資本金決定書』については、以下のページをご覧ください。
現物出資をする場合の添付書類
現物出資をする場合は、以下の書類も必要です。
・財産引継書等
・資本金の額の計上に関する証明書
印鑑届出書
合同会社を設立したら会社代表印(会社実印とも言います)を法務局に届けます。
そのための届出書を作成します。
印鑑届出書は、通常は設立登記申請書と一緒に提出します。
6.合同会社の設立登記を申請する
設立登記申請書を作成し、会社の本店所在地を管轄する法務局に設立登記を申請します。
設立登記を申請する前に、法務局の相談で申請書類の確認をしてもらうことをお勧めします。登記の相談については、管轄の法務局の商業・法人登記の担当窓口にお問い合わせください。
会社は設立登記をすることにより成立します。設立登記の申請をした日が会社の設立日になります。正確に言うと、法務局が設立登記申請を受け付けた日です。
設立登記申請書については、以下のページをご覧ください。
登記申請の方式
登記の申請は、以下のいずいれかの方法によりすることができます。
- 書面申請(法務局へ持参)
- 書面申請(郵送)
- オンライン申請
書面申請の場合には、合同会社の代表者が設立登記申請書と添付書類を合同会社の本店の所在地を管轄する登記所に提出します。
自分で設立登記を申請する場合は、郵送でなく直接法務局へ持参するのが望ましいでしょう。窓口で質問することが出来ますし、もし提出書類に間違いがあったとしても、その場で直せることがあるからです。